企業運営において、欠かせない資産のひとつが「人材」です。そして、その人材採用を担う「採用担当者」もまた、企業の成長において重要な存在です。
しかし採用担当者の業務は非常に多岐にわたるため、「求職者との板挟みで精神的に辛い」「激務で休めない」など、悩みを抱えるケースも少なくありません。企業がその悩みに気づけないままだと、採用活動の停滞や担当者の離職につながるリスクもあります。
この記事では、採用担当者が直面しやすい悩みやその原因、解決のためのヒントをわかりやすく解説します。加えて、採用担当者に求められるスキルや適性も紹介するため、採用業務に課題を感じている方はぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
- 採用担当者がよく抱える悩み5選
- 採用担当者が悩む4つの主な原因
- 新卒・中途採用での業務の違いと特徴
- 「辞めたい・辛い」と感じたときの対処法
- 採用担当者に必要なスキルと向いている人の特徴
- 離職を防ぎ、採用担当者の負担を軽減する方法
採用担当者が抱える悩み5選【採用担当あるある】
採用担当者は、業務の多さや精神的な負荷から、さまざまな悩みを抱えがちです。ここでは、特に多くの採用担当者が経験する5つの代表的な悩みをご紹介します。
1. 採用業務が激務で、なかなか休めない
採用担当者は、採用関連の業務に加え、他の人事業務を兼務していることも多く、常に多忙です。
主な業務内容:
- 求人媒体への掲載・管理
- 応募者対応(メール・電話など)
- 書類選考・面接の調整
- 内定通知・入社準備対応
特に新卒採用では、大学との連携や説明会の運営など、業務のピークが重なりやすく、長期間にわたり激務が続きます。通年採用の企業では、スケジュールが読めず「常に忙しい」と感じることも。
2. 求職者からの応募が集まらない
求人を出しても応募が集まらない、という悩みもよく聞かれます。
主な原因:
- 自社の知名度が低い(中小企業・ベンチャーなど)
- 採用手法が自社に合っていない
- 魅力や独自性が伝わっていない求人内容
また、応募はあるもののミスマッチな人材ばかりで、書類選考の手間だけが増えてしまうと、担当者の負担が増し、モチベーションの低下につながります。
3. 面接辞退・内定辞退が相次ぐ
せっかく面接や内定まで進んだ応募者が、突然辞退してしまうケースも多々あります。
辞退の理由:
- 他社との比較で魅力を感じなかった
- 採用フローが長すぎて他社に決めてしまった
- 条件面で他社の方が良かった
面接辞退が出るたびに、日程再調整や社内連携が必要となり、業務の繰り返しに疲れてしまうこともあります。
【採用担当の悩み4】求職者と会社の板挟みで感じるストレス
採用担当者は、企業側と求職者側の間に立つ立場であるため、双方の要望に挟まれて精神的なストレスを抱えやすいのが現実です。
たとえば、企業側は「人件費などのコストを抑えたい」「早く戦力になる人材を採用したい」と考える一方で、求職者は「給与や福利厚生が充実している職場を選びたい」「柔軟な働き方を希望する」といったニーズを持っています。
そのギャップを埋めるために、採用担当者は条件の調整や交渉を行いますが、双方の思惑が一致しなければ、内定辞退や入社後のミスマッチといった結果になってしまうこともあります。
さらに、採用目標が未達の場合には、経営層から
- 「なぜ採用できないのか?」
- 「もっとコストをかけずに優秀な人材を採用できないのか?」
といった厳しい声が上がることも。現場と経営、求職者の間に立たされることで、「理不尽さ」や「板挟みの苦しさ」を感じて疲弊するケースも少なくありません。
【採用担当の悩み5】採用ミスマッチや早期離職が発生する
**せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまう、または現場との相性が悪い――**こうした「採用ミスマッチ」や「早期離職」も、採用担当者の大きな悩みです。
離職が発生すれば、新たな採用活動が必要となり、求人媒体への掲載や面接など、コスト・時間・手間のすべてが再発生します。さらに、かけた採用コストが無駄になることで、経営へのダメージも避けられません。
また、採用後のトラブルとしてよくあるのが、
- 実務スキルが足りなかった
- 社風に馴染めず人間関係が悪化した
- 勤怠やマナーに問題がある
といった「現場からのクレーム」。この場合、「なぜこの人材を採用したのか?」と採用担当者が責任を問われることもあります。
実際には、選考時にすべてを見抜くのは難しいにも関わらず、採用の結果についての不満が採用担当者に集中することが、ストレスや自信喪失の原因になるのです。
【採用担当の悩み6】採用手法やトレンドの変化に追いつけない
採用市場は日々変化しており、求職者のニーズや行動パターン、採用チャネルは常に進化しています。しかし、日々の業務に追われていると、最新の採用手法やマーケティング手法、採用管理ツールなどの情報収集・活用が後回しになりがちです。
例えば、
- SNSやダイレクトリクルーティングなど新たな手法に対応できない
- データ活用や採用管理システムの導入が遅れている
- 応募者体験(CX)を改善する発想が乏しい
といった状態では、競合他社に後れを取り、応募者から選ばれにくい企業となってしまいます。
「時代に合った採用ができていないのでは…」という焦りや、「自分のスキルが時代遅れではないか」という不安も、採用担当者の心を重くします。
採用成功には、人事の専門性だけでなく、マーケティング視点やデータ分析力も求められる時代。その変化に対応しきれないことが、新たなプレッシャーとなっているのです。
ポイントまとめ
- 採用担当者は「調整役」としての負荷が大きい
- 採用ミスは企業全体の課題にもかかわらず、現場からのクレームは個人に集中しがち
- プレッシャーや理不尽さにより、心身の疲労やモチベーション低下を招くことも
採用担当者が悩みを抱えてしまう5つの原因と課題
採用担当者が悩みを抱えてしまうのはなぜでしょうか。
前述したありがちな悩みをふまえて、採用担当者が悩んでしまう主な原因と課題を5つピックアップしました。以下を把握することで、採用の現場における課題が明確になり、対策を検討するヒントになるでしょう。
- 効率的な採用業務のフローができていない
- 自社に必要な人材の定義ができていない
- 自社の特徴や強みを把握できていない
- 採用担当者に向いていない人が業務を担当している
- 採用後の定着や活躍を支援する仕組みが整っていない
1. 効率的な採用業務のフローができていない
採用業務が非効率だと、採用担当者の負担が増え、疲弊やストレスの原因になります。面接日程の調整など、手間のかかる作業に多くの時間を奪われるほか、手作業によるミスのリスクも高まります。
採用担当者は、採用以外の業務も兼任しているケースが多く、特に新卒採用の時期などは業務過多になりがちです。業務量の過多は残業やコスト増加にもつながるため、業務フローの見直しと体制整備が急務です。
2. 自社に必要な人材の定義ができていない
自社が求める人物像があいまいなままでは、適切な採用ができず、ミスマッチや早期離職につながります。
「やる気のある人」など抽象的な表現ではなく、具体的なスキル・経験・価値観を明示することが重要です。企業規模が小さいほどこの課題を抱えている傾向があり、求人内容の的確な設計や評価基準の明確化が求められます。
3. 自社の特徴や強みを把握できていない
採用活動では、自社の魅力や独自性を求職者に伝える必要があります。しかし、自社の強みや価値を正確に把握していないと、訴求力のある求人情報を作成できず、応募者数の減少や内定辞退につながります。
また、他社との差別化ができないことで、競争力のある人材確保が難しくなる可能性もあります。まずは自社の魅力を言語化し、適切な媒体・手法を選ぶことが重要です。
4. 採用担当者に向いていない人が業務を担当している
採用担当者は、求職者にとって企業の第一印象を決定づける存在です。そのため、人と向き合う姿勢や丁寧なコミュニケーション能力が求められます。
しかし、業務を割り当てられただけで適性や経験のない担当者が任命されてしまうケースもあり、対応ミスや企業イメージの低下を招くことも。公平な評価を妨げる「認知バイアス」なども、採用の質に影響を与える要因です。
5. 採用後の定着や活躍を支援する仕組みが整っていない
採用活動が成功しても、入社後に社員が定着・活躍できなければ本末転倒です。しかし、オンボーディングや定着支援の体制が不十分な企業も少なくありません。
結果として、入社後のギャップや不安から早期離職が発生し、採用コストが無駄になってしまうケースも。採用担当者は、採用成功の責任を感じてしまい、精神的な負担を抱える原因となります。
現場やマネジメント層と連携し、採用から定着・活躍まで一貫した支援体制の整備が必要です。
採用担当者の悩みを解消する5つの解決策とヒント
ここまで、採用担当者が抱えがちな悩みとその背景・原因を解説してきました。
これらの問題を放置してしまうと、採用目標の未達成だけでなく、採用担当者自身のモチベーション低下や離職にもつながるおそれがあります。貴重な人材の損失は、企業全体の生産性や組織の信頼性にも大きな影響を与えるため、早急な対策が求められます。
ここでは、採用現場の課題を解決するための具体的なヒントや施策を5つご紹介します。
1. 効率的な採用フローやプロセスの構築
業務負荷を軽減し、採用活動の質を高めるには、標準化された採用プロセスの整備が不可欠です。たとえば、以下のような業務の自動化・見直しが効果的です。
- 応募受付〜日程調整の自動化(ATSなどの活用)
- フォーマット化された書類審査・面接評価の仕組み
- 採用進捗をチームで共有する体制
これにより、採用担当者が重要な判断業務に集中でき、ミスや重複作業も防止できます。業務の「属人化」を防ぐことも、スムーズな引き継ぎや組織的な採用活動に役立ちます。
2. 精度の高い採用手法やツールの導入
求める人材と出会うには、採用ターゲットに合った手法やツールの選定が重要です。
- ダイレクトリクルーティング(スカウト型)
- 採用マーケティング(SNSやオウンドメディア)
- 適性検査ツールや面接支援ツール(AI面接など)
こうしたツールは、応募者の見極め精度を高め、ミスマッチや早期離職の防止にもつながります。費用対効果の高い手段を活用することで、採用成功率の向上とコスト最適化が図れます。
3. 体験入社やインターンシップの導入
採用前に実際の職場や業務を体験してもらうことで、求職者と企業双方の認識のズレを解消できます。
- 職場見学や体験入社によるリアルな雰囲気の共有
- 現場社員との座談会・仕事体験
- 短期インターンでの実務参加
これにより、入社後のギャップが減り、定着率の向上や早期離職の防止に効果的です。応募者にとっても安心して意思決定できる環境が整います。
4. 採用や面接に関する社内研修の実施
採用活動の質は、現場の理解と協力によって大きく左右されます。人事部門だけでなく、面接官や配属先のマネージャーに対しても、以下のような研修の実施が効果的です。
- 公平な面接手法と評価基準に関する研修
- 無意識の偏見(認知バイアス)を避けるための講習
- 自社の魅力を語るためのメッセージ設計ワーク
こうした取り組みによって、一貫性のある採用活動が可能になり、求職者への印象も向上します。
5. 採用担当者に向いている人材の配置
採用業務には、コミュニケーション能力や調整力、客観的な判断力が求められます。適性のない人材が任されると、企業イメージの悪化やミスマッチの発生リスクが高まります。
そのため、下記のような対応が必要です。
- 向いている人材を見極めたうえでの人選
- 採用業務の一部を外部パートナーに委託(RPO活用)
- 適性検査などを活用した配置判断
また、採用担当者のキャリア設計や評価制度の整備も重要です。やりがいを持って働ける環境が整えば、モチベーションの維持にもつながります。
まとめ
採用担当者の悩みは、単に「人が足りない」という問題だけではなく、業務フローや社内理解、担当者の適性など、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。
採用は企業の未来を左右する重要な活動です。だからこそ、現場任せにするのではなく、会社全体で取り組むべき組織課題として捉え、継続的に見直しと改善を行っていくことが大切です。